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美博ノート

「誰ケ袖(たがそで)の図」

日本美術 デザインと文様(光ミュージアム)

作者不詳「誰ケ袖の図」(部分)
作者不詳「誰ケ袖の図」(部分)

 ハート柄のような大胆なデザインや、花を重ねた「唐花」文様。家人不在の部屋をのぞき見ると、色とりどりの意匠の着物が衣桁にかけられている。さて、どんな美しい女性が袖を通すのだろう。想像を膨らませて楽しむ「誰ケ袖の図」(江戸時代初期)。

 衣桁にかけられた着物を図案にして屏風に描く様式を「誰ケ袖図屏風」といい、桃山から江戸時代に流行した。着物の袖の形に作ってたもとに入れた匂い袋のことも「誰ケ袖」と呼んで、香合や茶わんなどにも描かれたという。

 この風流な名前は、古今和歌集が由来だと、学芸員の今泉たまみさん。「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも(わが家の梅の香りがよいのは、誰の袖の移り香のせいだろうか)の歌と結びつけられたようです」と解説する。文様は衣装を彩るだけでなく、身にまとう人までをも思わせる。

(2020年4月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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