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アートリップ

「ムクドリの飛行のように」 
ダニエル・ビュレン作(東京都中央区)

旗ずらり 吹き抜け彩る

大きさは縦19×横9メートル=山本倫子撮影
大きさは縦19×横9メートル=山本倫子撮影
大きさは縦19×横9メートル=山本倫子撮影 館内にある植栽のアート、パトリック・ブラン「Living Canyon」=山本倫子撮影

 見上げると、赤と青の対比が目に飛び込んできた。複合商業施設GINZA SIXの店舗中央を貫く吹き抜け空間に、2種のストライプの旗約1500枚がずらりと並ぶ。作者は、仏現代美術の巨匠ダニエル・ビュレン(80)。それまでは、現代美術家・草間彌生(89)の作品が設置されていたが、今年4月、開業1周年を機に衣替えした。

 「草間さんと比肩する作家でなければ、と悩みました」と振り返るのは、同館のアートを監修する森美術館館長の南條史生(ふみお)さん(69)。設置作業には、売り場スペースの真上で短時間のうちに行わなければならないという条件もある。それらの制約をクリアして選ばれたのが、ビュレンだった。

 ビュレンは50年以上、ストライプを使って、世に芸術の在り方を問うてきた。1979年、湖でストライプ柄の帆を張ったヨットを走らせ、その帆だけを美術館に展示した。「美術館に並ぶと観衆はアートだと言ったが、湖上では違った。アートとは何か、誰が決めるのか。定義を問い直したのです」と南條館長。

 作家自身は「見た人が自由に思い巡らせ、言葉を生む契機になれば」と語る。本作は見る位置によって表情が変わるのも見どころ。和洋新旧が混在し、様々な顔を持つ銀座を象徴するようだ。

(笹木菜々子)

 GINZA SIX

 昨年4月、銀座松坂屋の跡地を含む二街区一体開発で誕生した。基本設計と外観のデザインは、建築家の谷口吉生(よしお)が手がけた。商業施設共用部のインテリアデザインは、仏出身のグエナエル・ニコラが担当。ファッションやコスメだけでなく、日本の伝統工芸品を扱う老舗や、アートギャラリー、能楽堂、レストランなど241店が集まっている。銀座の新名所として定着し、国内外からの買い物客でにぎわいを見せる。


ぶらり発見

キューブパレタスSET

 GINZA SIXの地下2階、旬の果物を使ったアイスを販売するPALETAS(TEL03・6263・9833)では、7月18日から夏限定「キューブパレタスSET」(写真、1800円)が登場。「ミルキーストロベリー」「抹茶大納言」など、人気のフレーバー6種を少しずつ楽しめる。

 地下3階、観世流の拠点である観世能楽堂(TEL6274・6579)では、能の公演を行っている。「夏休み企画 はじめて能」(8月19日(日)開催)は、初心者や子どもにもおすすめ。時間やチケット購入などの詳細は、電話かウェブで確認を。

(2018年7月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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