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アートリップ

出会い 
ウィリアム・マクエルチュラン作(静岡市葵区)

「おまち」での再会見守る

高さ約2メートル。見る角度によって顔の表情が違って見える=谷本結利撮影
高さ約2メートル。見る角度によって顔の表情が違って見える=谷本結利撮影
高さ約2メートル。見る角度によって顔の表情が違って見える=谷本結利撮影 ベルナール・ジトン作の噴水「ZEN」=谷本結利撮影

 「久しぶり!」「元気?」。静岡市街の中心を貫く青葉シンボルロードを進むと、そんな会話が聞こえてきそうな彫刻に出会った。作者のカナダ人作家、ウィリアム・マクエルチュランは、恰幅(かっぷく)のよいスーツ姿の男性をモチーフにした作品で知られる。驚きと喜びの交ざった表情と、体を反らせた姿が、何ともユーモラス。「静岡が人と人の出会いの場になるようにという願いを感じます」と言うのは、静岡の文化活動に詳しい佐野勝美・エフエムしみず取締役(67)だ。

 徳川家康の居城、駿府城の城下町として栄えた静岡市。県庁周辺は呉服町、七間町などの商店街が連なり、地元では「おまち」と呼ばれる。大火や空襲をくぐり抜け、戦後は屋台が立ち並ぶ駐車場になっていた地域を、市民の憩いの場として整備したのは、1992年のことだ。緑地を設け、風や水を意識したアート作品7点を配置した。「大道芸ワールドカップ」や「ストリートフェスティバル」など年間約100件のイベントも開催され、まさに「出会いの場」として活用されている。

 「出会い」の前で読書をしていた渡辺楯雄(たてお)さん(74)は、「彼らは飲む約束をして別れるんじゃないかな」と話す。想像を膨らませる渡辺さんの前を、知人が通りかかった。語り合う姿は、「出会い」の像のようだった。

(下島智子)

 青葉シンボルロード(青葉緑地)

 静岡市役所から常磐公園をつなぐ街路。長さ525メートル、幅36メートル(中央帯、車道、歩道含む)。同市の「顔」として、情報発信やうるおいの場となるよう再整備し、1992年に完成した。光、イベント、安らぎ、水の4ゾーンで構成。「出会い」のほかに、水遊びが楽しめる池のアート「水辺の遊び」や、石柱から水が流れ落ちる「天使の虹の階段」などがある。同年、第4回全国街路事業コンクールで同事業促進協議会長賞、93年、手づくり郷土(ふるさと)賞を受賞。

 《アクセス》静岡駅から徒歩10分。


ぶらり発見

静岡おでん

 シンボルロードの近くには、かつての屋台が姿を変えた「青葉おでん街」「青葉横丁」がある。串に刺した黒はんぺんなどの具を、しょうゆのきいた出汁(だし)で煮た静岡おでんの専門店が並ぶ。問い合わせはするが企画観光局(054・251・5880)。

 作品から徒歩5分。徳川幕府最後の将軍・慶喜が余生を過ごした屋敷跡に建てられた料亭が浮月楼(ふげつろう)(TEL252・0131)。2100坪の広さを誇る日本庭園には、慶喜が船遊びを楽しんだといわれる池もある。

(2018年7月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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