長野県中部、高原地帯にある富士見町。別荘地の中に屋根だけが立っている、テントのような建物は何?
東京に住む会社員男性(50)がこの土地を買ったのは、太陽光パネルを設置して〝発電所〟を造るためだった。しかし、近隣の環境に配慮し計画を変更。「別の形にして生かしたい」と、セカンドハウスを作ることにした。
依頼したのは妻(51)がたまたま参加したイベントで講演していたドイツ出身の建築家・彦根アンドレアさん(60)。自然や人間に優しい建築を目指し、自邸に太陽光発電システムを取り入れている。
「太陽光で発電し、ゆくゆくはいろいろな人たちに使ってもらえる場所にしたい」と考えた男性と妻。「ユニークな建物に」とだけ要望を伝え、あとは彦根さんにゆだねた。
山々に囲まれた緑豊かなこの地になじむよう、彦根さんは木造にこだわった。テントのような、合掌造りのような形は何度か足を運ぶうちにひらめいた。雪も枯れ葉も自然に滑り落ち、メンテナンス面でも土地に適したものになった。
ガスは使わないオール電化。電気はひいたが、極力自家発電でまかなうことを目指した。屋根の片面に約2×10㍍の太陽光パネルを設置、高気密・高断熱の建物とした。
夏は涼しくエアコンいらずだが、冬は気温が零下になる。「ペレットストーブと廊下の床暖房だけで十分な暖かさ。エネルギーを抑えつつ心地よく過ごせました」。余剰電力は売電し、年間収支はややプラスだった。
付近に点在する、長年放置された別荘が気になるという男性は、遠い将来に廃虚になることは避けたいと願う。「形が面白いとか、楽しい空間とかで誰かが使い続けてほしいという妄想も、形にしてもらった」
(片山知愛、写真も)
DATA 設計:彦根建築設計事務所・彦根アンドレア 《最寄り駅》 富士見駅から車 |
富士見駅から車で約6分のカゴメ野菜生活ファーム富士見(お問い合わせは0266・78・3935)では、野菜の収穫体験(500円~)や野菜ジュースの工場見学(100円、ホームページから要予約)などが楽しめる。(前)10時半~(後)4時。イタリアンレストランもある((前)11時半~(後)3時、ラストオーダーは2時半)。9月7日、11月9日、(祝)を除く(火)、12月中旬~3月下旬休み。