バースデーケーキが山を登ってきた。山頂からリスやウサギの音楽隊が降りてくる。「バイバーイ!」。子どもたちが大きな声で手を振り合った――。
真っ赤なイチゴや水色のろうそくをあしらった「スイート」と、鍵盤やト音記号、楽器で飾られた「ドレミ」。標高642メートルの生駒山頂にある遊園地へ、子どもたちの夢を運ぶケーブルカーだ。
遊園地は1929(昭和4)年に開園した。「30年ぶりに来ました。前回は子どもが小さいころ夜景を見に連れてきたんやけど、今日は孫2人と。ふだんは塾やスイミング教室で忙しいから、今日は特別なんです」と大阪府羽曳野市の男性(67)は顔をほころばせた。
広報の木村洋三さん(40)によれば、山頂周辺は昭和40年代まで、遊園地のシンボル、飛行塔を中心にロッジやキャンプ場、グライダーの離着陸場などが並ぶ一大レジャー拠点だった。
時を経てレトロで懐かしい雰囲気が持ち味となった今も、行楽シーズンには一日8千人が訪れる。夏のナイター営業の明かりは、大阪・堺や高槻からも見えるという。それを見て「今年も行こか」と訪れる客も少なくないそうだ。
開園と同時に営業を始めたケーブルカーは、2000年に車両を一新。「スイート」と「ドレミ」が走り始めた。「遊園地までわくわくしながら行ってもらわんとね」。信貴生駒鋼索線区助役の宮内宏知さん(55)が笑った。
文 辻村碧/撮影 バンリ
近鉄生駒鋼索線(通称生駒ケーブル)は、奈良県生駒市の鳥居前駅~宝山寺駅を結ぶ宝山寺線と、宝山寺駅~生駒山上駅を結ぶ山上線からなる2.0キロ。 宝山寺線は宝山寺への参拝客を運ぶため1918(大正7)年に開通した日本最初のケーブルカー。国内唯一の複線ケーブルカーでもある。宝山寺(TEL0743・73・2006)は1678年に湛海(たんかい)律師が開山。5月1日(水)~10日(金)、大般若経600巻を転読する大般若会式を開催。5月8日(水)は、花御堂に安置した誕生仏に甘茶をかけて釈迦生誕を祝う仏誕会が開かれる。
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生駒山上遊園地(TEL0743・74・2173)の飛行塔(500円)は開園時に造られた国内最古とされる大型遊具。戦時中は防空監視塔に使われ、金属供出をまぬかれた塔体や基部が残る。奈良から大阪まで一望の遊園地には子どもが楽しめる遊具が24種。入園無料。 |