読んでたのしい、当たってうれしい。

ひとえきがたり

御代田(みよた)駅(長野県、しなの鉄道)

券売機の隣 中学生ら生放送

切符を買う人の隣で生放送中。地元の人には見慣れた光景だ
切符を買う人の隣で生放送中。地元の人には見慣れた光景だ
切符を買う人の隣で生放送中。地元の人には見慣れた光景だ 御代田(みよた)駅

 ガラス張りのドアの上に「放送中」の赤いランプがともった。男女がカメラに向かってトークを繰り広げる。切符売り場の隣、6畳ほどの小さな部屋。「西軽井沢ケーブルテレビ」のスタジオだ。

 局長の石川伸一さん(65)は地元の御代田町出身。1984年、妻が経営する喫茶店の片隅で開局した。駅舎にスタジオを移したのは89年。当時の駅長から空いたスペースを使わないかと誘われた。

 移転を機にただ一人の社員、小泉和子さん(47)が加わった。今では局長の次女、石川優美聖香恋(ゆうびせいかれん)さん(29)もスタッフとして働く。契約世帯は3千戸近く、町の全世帯の約半数にまで増えた。

 スポーツ大会や学校行事、祭りや議会の中継……。「取材することはいくらでもあるんです」と石川さん。

 月曜を除く毎日、夜7時から生放送する「御代田TODAY」は開局以来の長寿番組。放送は9千回を超える。その日に取材した映像を流すほか、中学生らが曜日替わりのキャスターとして出演し、身の回りのできごとを話す。この日の担当は新田美月さん(14)。「明日は県の陸上大会に出場します」と報告した。

 「この町は隣の軽井沢や小諸のように有名ではないけれど、子どもたちに自信を持って欲しいんです」。故郷を離れた子どもたちが帰ってきた時、一番に出迎えられるのが駅の中のスタジオのよいところ。そう言って石川さんがひげに包まれた顔をほころばせた。

文 中村和歌菜撮影 馬田広亘 

沿線ぶらり

 しなの鉄道は、JR信越線の軽井沢駅(長野県軽井沢町)~篠ノ井駅(長野市)間65.1キロを、1997年の長野新幹線開業と同時に引き継いだ3セク鉄道。

  観光列車「ろくもん」が軽井沢~長野駅間で運行中((土)(日)など)。赤い外観は、真田幸村が武具を赤塗りで統一した「赤備(ぞな)え」にちなむ。問い合わせはしなの鉄道(0268・21・4700)。

 小諸城跡の懐古園(TEL0267・22・0296)は小諸駅からすぐ。広大な敷地には、島崎藤村の資料を集める記念館や、画家小山敬三の作品を展示する美術館のほか、遊園地や動物園なども。

 

 興味津々
 
 

 駅から徒歩7分の浅間縄文ミュージアム(TEL0267・32・8922)では、浅間山周辺の縄文文化を紹介。御代田町の川原田遺跡から出土した国の重要文化財「焼町(やけまち)土器」=写真=などを展示する。500円。(月)休み(8月は無休)。

(2014年7月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

ひとえきがたりの新着記事

新着コラム