ファストフード各社が低価格化を競った１９９０年代後半、外食産業には「５００円の壁」が築かれ、多くの日本人がとりこになりました。根っからの倹約家の私もいまだにワンコイン信者です。

　ここは一昨年、引っ越した際に安い十割そばの店があると知人から聞いて訪問したのが最初です。半信半疑で食券を購入すると、コシのある香り高い十割そばに濃いめのつゆが添えられて出てくるではないですか。他店では見ないワカメのサービスは、四角いそばの器の一辺に壁を築くように盛ります。注文後に揚げるサクサクのかき揚げをつけるのも好きです。ボリューム満点だから、これを食べた日は夕飯を軽めに出来る点でもコスパ最高ですね。

　無類の麺食いで、外食時の昼食の８割は麺類なのですが、ＭＢＡ（経営学修士）取得のための海外留学や、その後の外資企業勤務の影響か、そばをズルズルと音を立ててすすることがためらわれて。西洋かぶれしているな、と思います。

　コロナ禍の厳しい状況でも、低価格高品質な食事を目指すお店を応援したいですね。

　ワンコインの壁とワカメの壁を支えるためにも、この後行ってこようかしら。

　◆十割蕎麦嵯峨谷浜松町店、渋谷東急本店前店、池袋店など都内に計６店。
　もり蕎麦３５０円。
　かき揚げ１５０円。
　問い合わせはフォーユー（０３・５９４４・９７０２）。

　おおつき・なな　マネックス証券のチーフ・アナリスト兼専門役員。
　名古屋商科大ビジネススクール教授。同社が個人の金融リテラシー向上を目的に開講した投資講座「マネユニ・アカデミー」ではユニバーシティ長（学長）を務める。