日本から現在の拠点、オランダのアムステルダムに戻る時にはこのおそばを必ず持ち帰っています。これを食べると、他のものを食べられなくなるくらい香りや歯ごたえがしっかりしています。葛が入っているからなのかな。

　オランダの自宅のキッチンは、私にとって食卓であり、会議室でもあり、書斎でもあります。仕事仲間と会議をして、料理を振る舞って一緒に食べて、プロジェクトを進めていく場です。日本から戻った後は、必ず日本食を期待されて、これでよく「そばサラダ」を作るんです。オランダの名産品のウナギの燻製（くんせい）をバーナーであぶったものや、キュウリやショウガの細切りなんかと合わせて、ごまソースでいただきます。こうすると初めてそばを食べるオランダ人の仲間でも楽しめるでしょ。コロナ禍の現在はなかなかかないませんが、日本にいてもおいしいと思えるものを、みんなと食べられることは、私にとってめちゃくちゃなぜいたくです。

　食文化は、言葉がなくても相手を深く理解できる鍵だと思っています。日本が好きでも、そばを知らない人にとって、未知の要素を自分が高いクオリティーで食卓に出せることがうれしいんです。

　◆奈良県東吉野村小川２０１（問い合わせは０７４６・４２・０３１０、ＦＡＸ４２・１１９２）。
　５束入り４８６円。
　午前１０時～午後５時。
　年末年始を除き無休。
　オンラインストアやファクスなどで販売。

　むかいやま・ともこ　ピアニスト。
　ディレクターとして選定した日本とオランダのアーティストの作品を、バーチャル世界で自身の演奏とかけ合わせた公演「ＳＵＰＥＲ　Ｔ　（ｅ）ｍａｒｋｅｔ」のアーカイブ映像を１１日からｗｅｂで配信。