濁りのないすっきりとした黄金色のスープに細かく刻んだネギが輪を描くように麺を囲む。このシンプルな料理を一目見て気に入りました。

　見た目だけでなく、味も好み。絶妙なゆで加減の細麺と、じっくり煮出した深いコクとうまみが感じられる鶏ガラスープ。そのままでも十分おいしいんですけれど、私はそこに少しのお酢を加えます。味がまろやかになって、うまみが増すんですよ。色とりどりの料理を味わったあと、締めに必ずこれを頼みます。食が細いので、同席した家族や友人とシェアして、麺とスープはいつも完食です。

　初めて店に行ったのは５年ほど前。友人が近所に家族的な雰囲気で、居心地の良い店があると紹介してくれたんです。有名な老舗中華料理店のスタッフが立ち上げた店はモダンで落ち着いたつくり。迎えてくれるのはこまやかな気配りをしてくれる中国人スタッフ。ゆっくり食事が楽しめるよう、いつも決まったテーブルに案内してくれたり、タイミングを見計らって適温のさゆを用意してくれたり。月に１度くらい利用しているので、すっかり顔なじみになりました。仕事の緊張感から解放されてリラックスできる。ここは私にとって大切な場のひとつです。

　◆東京都港区西麻布３の２０の３（問い合わせは０３・６８０４・２８９８）。
　１１００円。
　午前１１時半～午後２時半、５時～８時。
　（月）休み。
　コロナ禍により営業期間の変更も。

　とりい・ゆき　ファッションデザイナー。
　１９７５年からパリコレクションに、８５年から東京コレクションに参加。６月９日から東京・国立新美術館にて開催の「ＦＡＳＨＩＯＮ　ＩＮ　ＪＡＰＡＮ」でアーカイブを展示予定。