読んでたのしい、当たってうれしい。

玉川奈々福さん
みるくの樹 はちみつりんごパイ

 東京・浅草は日本浪曲協会や、毎月1~7日に浪曲がかかる劇場「木馬亭」があるホームグラウンドです。その一角に控えめなたたずまいの洋菓子店を最初に見つけたのがいつか思い出せないのですが、優しい味でおいしくて。
 
 はちみつりんごパイは、シナモンも香料も使わず最小限の素材で焼き上げられていて、サクサクの生地から丁寧な仕事ぶりが伝わります。
 
 協会で稽古する時や木馬亭の口演の際、まとめ買いします。若い人たちが食べる時間も惜しんで芸事に励み、劇場の裏方仕事に精を出しているので、小ぶりでさっと食べられるものが重宝されます。
 
 幼いころ、アップルパイは特別な味でした。横浜で暮らしていて、休日に家族5人で繁華街の伊勢佐木町に出かけ、洋菓子店「不二家」に立ち寄るのが楽しみでした。お気に入りがアップルパイ。誕生日も「あみあみ」の生地が特別感を醸すアップルパイでお祝いしてもらいました。
 
 落語家や講談師は高座にあがる前は一切食べものを口にしない、とも聞きますが、浪曲師は「おなかが減っていては声が出ない」とばかりによく食べる。楽屋には師匠方が手づくりしたおかずや漬けもの、お客様の差し入れのスイカが丸ごと、さらに出前のもつ煮込みまで。「おなか、すいてないか?」って誰もが心を配ってくれます。
(聞き手・桝井政則)
 
 ◆東京都台東区浅草1の40の5(☎03・3847・1203)。午前11時~午後7時、水曜休み。260円(税込み)。1日に200~300個売れる。開店時刻に合わせて訪れると焼きたてが買える。店のサイト(https://milknoki.jp/)でネット販売も
 

 たまがわ・ななふく 浪曲師。横浜市出身。筑摩書房の編集者の傍ら、趣味のつもりで日本浪曲協会の三味線教室に通い、1995年に曲師(三味線)として二代目玉川福太郎に入門。師の勧めで浪曲を始めて2001年に浪曲師として初舞台。第11回伊丹十三賞を受賞。Webサイト朝日マリオン.コムに「ななふく浪曲旅日記」(https://www.asahi-mullion.com/column/article/roukyoku)を連載中。

【読者イベント浪曲会開催】

 玉川奈々福さんと曲師(三味線)の広沢美舟さんが出演する「玉川奈々福独演会『ななふく浪曲旅日記』をうなる」を8月24日午後2時から、東京都中央区築地5の3の2の朝日新聞東京本社読者ホールで開きます。予約は3千円、当日3500円。予約の申し込みは名前、人数、電話番号をメール(apkikaku@asahi.com)でお伝えください。

 

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