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高嶋仁さん
「魚料理 ろっこん 和歌山駅前」 サバの煮付け

 中学卒業まで、長崎県の福江島で過ごしました。戦後の貧しい時代でしたが、魚だけは新鮮なものを食べて育ちました。家の窓から魚が釣れたし、漁船用の製氷工場で働く父のもとに行けば、「これ持ってけ」と、出入りする漁師さんが取れたての魚をくれました。魚に育てられたようなもんですから、味にはちょっとうるさいんですよ。一口食べて「これは新鮮やな」「ちょっと日が経っとるな」とわかります。
 今、海の幸に恵まれた和歌山に住むのも縁ですかね。中でも、大きな野球の大会前後の激励会や慰労会で行くのがこのお店。刺し身盛り合わせに、鯛めしに、魚なら何でもうまいんですよ。特にサバの煮付けは、甘辛い紀州有田の醬油にサバのうまみが広がって、丸々とした南高梅もさっぱりしていいアクセントです。行きつけなので、「今日はええ魚ある?」と気軽に聞けるし、「監督、今年は(甲子園出場)どうですか?」と店員さんに聞かれたら、「おう! 任しとけ!」と答えてました。気心知れたお店でうまい魚を食べるのは、やっぱりほっとしますよ。
 高校野球シーズンが真っ盛りですね。悔いだけは残さないよう、選手には頑張ってほしい。思い返すと、宿舎の朝食をしっかり食べていた生徒は、やっぱり試合で活躍していましたよ。

聞き手・伊藤真弘

 

 ◆和歌山市美園町4の87(☎073・433・6001)。1320~1650円(切り身の大きさによる)。ランチ時は「煮魚御膳(1300円)」でも提供。ランチ午前11時半~午後2時半(ラストオーダーは2時)、ディナー5時半~10時半(同9時半)。日曜休み。

 たかしま・ひとし 智弁和歌山高校野球部・前監督。1946年生まれ、長崎県出身。智弁学園(奈良)、智弁和歌山を率いて甲子園に春夏通算で38回出場。68勝は歴代2位。2018年夏限りで監督を勇退。現在は両校の名誉監督を務める。

(2024年8月8日付け朝日新聞夕刊掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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