秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
主人公のヨシカは他人とコミュニケーションがうまく取れず、妄想癖があって、24歳になっても脳内で中学生の頃の同級生「イチ」に恋をしているんです。私も中学生の頃はクラスメートといるより、ひとりで漫画を描いて過ごしているようなところがあったので、ヨシカに共感したところがあったのかもしれません。
主人公の周りも面白い人ばかり。特に、ヨシカが「ニ」とニックネームを付けた同僚の男の子のマイペースで空気を読まない感じとか、おさげ髪のコンビニの男性店員さんとか、片桐はいりさんが演じるオカリナ吹きの隣人とか、個性が強すぎて印象的でした。自分の周りにも風変わりな人が多いからなのか、ちょっと変わった人が登場する作品が好きなんだろうなって思います。
見どころは「まさかそれも妄想だったの?!」っていう事実をヨシカが歌って暴露するミュージカルみたいなシーン。綿矢りささんの原作にはなかった場面なので、映像化されるってこういうことなんだって、改めて驚かされました。
全編を通して、ヨシカの表情がとても豊か。松岡茉優さんの演技に見入ってしまいました。中でも、妄想に没頭するときの無表情な「目が死んでる」ところを描きたかった。ヨシカが自分の殻にこもって、10年間ずっと妄想の中でぬいぐるみのようなイチを抱きしめているイメージです。
自分自身を「絶滅危惧種」にたとえるヨシカが、自宅で大事にめでているアンモナイトの化石もこの作品では欠かせない存在なので、それも一緒に描いてみました。
(聞き手・白井由依子)
監督・脚本=大九明子
原作=綿矢りさ
出演=松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、片桐はいりほか かけひさとこ
1976年生まれ。千葉県在住。著書に絵本「かわいいおかし」(教育画劇)、「ゆうごはんなにたべたい?」(赤ちゃんとママ社)。 |