秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
せりふは一切なく、映像とミニマル・ミュージックで知られる作曲家フィリップ・グラスの音楽だけで描いたドキュメンタリーです。アメリカ先住民がユタ州の洞窟内に描いた壁画から始まり、壮大な自然のシーンが続く。そこへショベルカーが出てきて人間が地球に痕跡を残し始めます。宇宙にロケットを飛ばし、核実験を実施し、工場で機械の歯車のように働く姿などが、俯瞰する神の視線のように、残酷に映し出される。題名の「コヤニスカッツィ」はアメリカ先住民ホピ族の言葉で「平衡を失った世界」という意味です。
映画を見て、自分の内面という洞窟に刻まれたイメージを絵に描きました。壁画と夜の高速道路のシーンが重なっていて、過去と未来が同時に存在します。映画は最後も壁画で終わり、壁画が未来を暗示していると僕は受け取ったんです。
現在の地質年代は約1万1700年前から続く「完新世」。でも産業が急激に発達して、人間が地質に大きく影響を与えるようになった時代を新たに「人新世」としようと、複数の学者が提唱しています。つまり平衡を失った時代。壁画はタイムカプセルみたいなもので、地球と調和を取りながら生きる方法が刻まれているように思います。
ただ監督は作品の解釈は見た人にゆだねると言っている。映画は、テクノロジーが悪いと言っているわけではないんです。美大生の時、アートって既存の言葉で説明できる、人間対人間の世界だということに違和感があった。そんな時にこの映画を見て、受け手に様々な解釈を許す作品のあり方に感動しました。
(聞き手・伊藤めぐみ)
監督=ゴッドフリー・レジオ
製作=米
音楽=フィリップ・グラス すずき・ひらく
11月16日~来年2月16日に東京都現代美術館で開催の「MOTアニュアル」に出展。1月に作品集「SILVER MARKER」を発売。 |