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私の描くグッとムービー

柳幸典さん(現代美術家)
「冒険者たち」(1967年)

人生を賭ける挑戦者の生き方

柳幸典さん(現代美術家)「冒険者たち」(1967年)

 「命を賭けて挑戦しなければ何物をも得ない」。少年の頃に見て、そんな感慨を持った映画です。「いい大学を出て、いい会社に入って」という型にはまった生き方を押し付けられるような悶々とした思いの時に、違う生き方を見せられて衝撃を受けました。

 冒険に挑むパイロット、画期的なカーエンジンを作るエンジニア、そして女性の前衛芸術家。それぞれが夢に挑戦して挫折し、一発逆転を狙ってヨットで宝探しをする旅に出る。そこには当然リスクがあり、彼らは命の危険に直面してしまう。

 3人とも人生の挑戦者なんです。僕と同じ、敷かれたレール上では進めない人間たち。皆魅力的ですが、特に前衛芸術家という職業はインパクトがあった。当時の日本で前衛芸術家は珍しく、芸術、しかも前衛で身を立たせることが成り立つとは思ってもみなかったので。フランスってすごい国だなって、純粋に外国への憧れを持ちました。

 映画では海に浮かぶ要塞が重要な役割を持ちますが、これが非常にかっこいい。元々僕は、秘密基地を作って遊んでいた子どもがそのまま大人になった感じでして。映画の要塞のような巨大な秘密基地を作りたいと常々思っていた。それで、岡山・犬島の精錬所の廃虚を秘密基地みたいな美術館に再生したり、広島・百島にアートセンターを作ったりしたんです。造船所が近くにある百島では、大型船のブロックを台船で運ぶ光景が見られ、それが要塞を連想させてわくわくします。そんな光景を撮った写真にドローイングを重ねて、今回のイラストにしました。

(聞き手・安達麻里子)

 

  監督=ロベール・アンリコ
  製作=仏
  出演=アラン・ドロン、リノ・バンチュラ、ジョアンナ・シムカスほか
やなぎ・ゆきのり
 1959年生まれ。犬島の犬島精錬所美術館の考案・実現、百島の「ART BASE百島」の設立など、瀬戸内海の離島を拠点に国際的に活動。
(2019年6月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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