秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
安藤サクラさんが好きで、出演映画は大体見ています。この映画を見たのも、安藤サクラさんがきっかけでした。
引きこもりで堕落した生活を送る32歳の一子(いちこ)が、妹と折り合いが悪くなり、家を出て百円ショップで働き始めます。ある日、帰り道にボクシングジムを見つけ、そこで狩野に出会います。それを機に一子もボクシングを始めて、傷つきながらも変わっていくという話です。
だらしない一子と、ボクシングで強くなっていく一子。力ずくで男に負けてしまう一子と、男に愛される一子。日常生活を淡々と撮りながら、「二面性」を軸に感情の浮き沈みを映しています。その感情の起伏に「余白」があって、見る人は自分や誰かを主人公と照らし合わせられるんです。こちらが試されているなって思いますね。私も、絵ではさりげなくそういう「二面性」や「余白」を意識しているので、通じるところがあるなと。
ボクシングを始めたきっかけはささいなことだったのに、彼女は何にあんなに勝ちたかったんだろう。無駄な努力ですよね。でも、それがかっこいい。私が熊本地震で被災した時と重なりました。当時、絵が無駄なものに思えて、しばらく描けなくなったんです。その時、友人が夜の街に散歩に連れ出してくれて。暗くて危なかったけど、静かで癒やされました。無駄なものは、それ自体がいとおしくて繊細なものだと気づいたんです。私もそういう意味合いで、絵を描き続けられたらと思います。
聞き手・渋谷唯子
監督=武正晴
脚本=足立紳
出演=安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平、坂田聡、根岸季衣ほか
1992年生まれ。日大芸術学部卒。東京と熊本を拠点に活動。グッズ制作や雑誌の挿絵などを手がける。作品集「ずっと一緒にいられない」を発売中。
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