秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
連続殺人犯を追うFBI実習生クラリスと、猟奇殺人鬼で元精神科医のレクター博士の奇妙な交流を描いた物語です。実は続編の「ハンニバル」を先に劇場で見て、何が面白いのか訳が分からなかったんですよ。でもなぜか興味を引かれて、前作のこの作品をDVDで見てみたら、こんなにきれいにまとまるストーリーがあるのかと。魅力的な人物造形も相まって、すっかり引き込まれました。
レクター博士がとにかく衝撃的です。彼の印象が強すぎて、「こんなに可愛いFBIがいるのか」と疑問に思うほど可愛いクラリスでさえ、あまり記憶に残らない。彼は頭脳明晰(めいせき)で博識で、隣の牢の囚人を言葉で狂わせて殺すなど、人を操る力もある。とても怖くて、とても魅力的な人物です。捕らわれているのはレクター博士ですが、ガラスを挟んでクラリスと会話する場面では、どちらが檻(おり)の中にいるのか混乱することがありました。檻の中にいるのは実はクラリスだったり、僕らだったり。博士みたいなサイコパスは世の中にたくさんいて、羊のように平凡に生きている僕たちが、それに気付いていないだけなんじゃないかとも。
2人の微妙な信頼関係で、なんだかラブストーリーのようにも見えてきます。「ハンニバル」で2人は再会しますが、レクター博士はまた行方をくらませる。だから、「彼は今どこにいるんだろう」って考えちゃいます。きっと2人はまた、どこかで再会しているんだと思います。
聞き手・安達麻里子
監督=ジョナサン・デミ
原作=トマス・ハリス
製作=米
出演=ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンスほか
ささき・みつひこ
1983年生まれ。イラストや装画も手がける。2011年、漫画「インターウォール」が文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品に。 |