秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
約20年前にテレビで初めて見た時から、私にとってずっと一番の映画です。アクションコメディーと、ヒューマンドラマが合わさった作品です。
物語は強盗の常習犯ハイ・マクダノーが、刑務所を出たり入ったりするうち、女性警官のエドと知り合い、結婚するところから始まります。結婚後、エドの不妊症が発覚し、絶望のふちにいたところ、地元の実業家に五つ子が誕生したことを知ります。2人はそのうちの1人をさらうことに成功しますが、そこからが大変。ハイの刑務所時代の仲間が脱獄して訪ねて来たり、賞金稼ぎが現れたりして、赤ちゃんを巡る闘いが始まります。
素晴らしいのはハイ役のニコラス・ケイジの表情。夫婦げんかでエドに殴られる場面が最高で、その顔だけで配役が決まったんじゃないのって思えます。
最後は赤ちゃんを返しに行き、被害者の実業家の前で子宝に恵まれなかったこと、そして離婚を決意したことを話します。それを聞いた実業家は2人に向かって「今日はゆっくり眠りなさい」と言う。人間味のある優しい言葉ですよね。
そして、2人が自宅に戻り、眠りについた時、ハイは夢を見ます。さらった赤ちゃんには、成長しても見知らぬ夫婦からクリスマスプレゼントが届き、その夫婦には、子どもや孫たちが遊びに来る。コメディーだけど、物語に一本筋が通っていて、何度見ても笑えます。でもラストは本当に切なくて、いつも泣いてしまうんです。
聞き手・吉田愛
監督=ジョエル・コーエン
共同脚本=ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
製作=米
出演=ニコラス・ケイジほか
むつ・えいこ
1954年生まれ。18歳で漫画誌「りぼん」でデビュー。近著にイラスト集「本や紅茶や薔薇(ばら)の花」(河出書房新社)。 |