秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
両親を亡くし、養父母に育てられている12歳の杏奈が、ぜんそくの療養で訪れた海辺の村で、謎めいた金髪の少女マーニーとひと夏を過ごす物語です。
心を閉ざし「自分は何なのか」という杏奈の不安な気持ちを、暗い雲や嵐の空で表していて、絵の持つ力やストーリーの展開に魅力を感じます。舞台は北海道ですが、空の描写を見て、僕は故郷の石川県を思い出しました。この作品の監督・米林宏昌さんと会う機会があり、同郷だと知ったんです。北陸は曇天が多く、お互いの見てきた原風景が一緒だったから、そう感じたのかも知れません。
祭りの夜、杏奈は湿地に立つ屋敷で、夢に出てきたマーニーと出会います。その後2人はすぐに打ち解け、舟上でお茶会をしたり、パーティーに忍び込んでダンスを踊ったりと「秘密の関係」が始まります。無邪気に見えるマーニーも、仕事や遊びに忙しい両親に置いてけぼりにされ、寂しい思いをしている。杏奈とマーニーは、「孤独感を味わっている」という共鳴する部分があります。
僕も父と長い間疎遠になっていた時期があり、自分の少年期と重ねて見るところがあります。父を憎んだこともあったけど、両親や先祖、故郷があって今の僕がいる。一時でも愛情を注いでもらったことを思い出せば、前に進む原動力になります。杏奈の「自分の原点を追い求める力」がマーニーとの出会いを呼び、一歩飛び出す勇気を与えたのでしょう。
聞き手・根津香菜子
監督・共同脚本=米林宏昌
声の出演=高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、黒木瞳ほか
つじぐち・ひろのぶ
東京・自由が丘の「モンサンクレール」など13ブランドを展開。石川県七尾市に、自身のあめ細工などを展示する美術館を持つ。 |