秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
リアルに核戦争の恐怖があった時代の忘れられない映画です。公開時に映画館で見ましたし、その後何度も見ています。当時は世界各地で核実験が繰り返されていて、僕も「恐怖」をテーマに絵を描いていました。
物語は広島に映画の撮影に来たフランス人の女優が、日本人男性と出会い、つかの間の恋に落ちるもの。女性はナチス占領下のフランスでドイツ兵と恋愛し、地下室に幽閉された苦しみを抱えていて、日本人男性は家族全員が被爆しています。脚本は作家のマルグリット・デュラス。2人の会話はデュラスの小説や詩を朗読しているかのようです。
「私は広島のすべてを見たわ」と言うフランス人女性に、日本人男性は「君は何も見ていない」と繰り返します。それは監督のアラン・レネが日本人を含めた世界の人に向けて、原爆の悲惨さを「あなたたちは何も知らない」と訴えているんだと思うんですね。楽しい映画ではないですが、知ることのためにも大事な地図を示していると思います。
僕は9歳の時に前橋で空襲に遭いました。空襲で爆弾を落とされた中でようやく命が助かった、という思いは消えないんですよ。もうすぐ戦争が終わった8月になるという意識もあって、この映画を選びました。絵は女性の「悲しみ」を描いています。左はフランスでの戦争体験、右は映画で看護師役に扮した彼女の目に原爆ドームが映り、2人はキスをしています。
聞き手・清水真穂実
監督=アラン・レネ
脚本=マルグリット・デュラス
製作=日・仏 出演=岡田英次、エマニュエル・リバほか つかさ・おさむ
1936年生まれ。エッセー「本の魔法」で大佛次郎賞。9月5日~17日、京都市・寺町通のG・ヒルゲ-トで個展「水上勉曼荼羅(まんだら)展」。 |