秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「寅さん」シリーズを初めて見たのは、ずいぶんと昔でしょうね。年を取るごとに面白く感じます。子どもや孫と一緒に、せりふの一つ一つに笑って泣いて。こんなに普遍性がある映画、ないですよね。
この作品は8作目。さくらの夫、博がお母さんの危篤を知り、さくらとともに岡山に向かう。そこに旅先の寅さんがやって来て、なぜか博の父親飈(ひょう)一郎と仲良くなるんです。
飈一郎を見て、「父だ」と思いました。飈一郎は大学教授で、妻の葬式の時に自室にこもって原稿を書くような、どうしようもない人。私の父も大学教授で、頭の中は学問のことばかりだった。他のことには無頓着でね。父に反発していた兄と、博の姿も重なります。
飈一郎が、10年前の旅の記憶を寅さんに語る場面があります。赤々と明かりが灯る農家の茶の間で、家族がにぎやかに食事をする風景。彼は自分の卑小さを認めながら、農家のだんらんに人間の幸せを見ている。特に昔の知識人なんかは「平凡さ」に憧れるところがあったんだと思います。
寅さんは自由奔放な漂泊の人。欲がなく、生きていることが人生。飈一郎が気に入ったように、私の父も、きっと彼を好きになったと思います。観客は皆「馬鹿だなぁ、寅は」って、愛を持って見るでしょ。うまく出来てるんですよね。今回シリーズを見直して改めて、洋次監督に感服致しました。
聞き手・安達麻里子
監督・原作・共同脚本=山田洋次
出演=渥美清、倍賞千恵子、池内淳子、森川信、三崎千恵子、前田吟、志村喬ほか
ばば・まりこ
1941年生まれ。45歳の時に突然芸術に目覚め、以来描き続ける。画集「ピンク幻想」が発売中。10月、東京・銀座の藍画廊で個展。 |