秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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19世紀後半のアメリカ、東部から西部の町マシーンへ仕事を求めてやってきた会計士ウィリアム・ブレイクが主人公。過って殺人を犯し、胸に弾を受けて殺し屋に追われながらネイティブ・アメリカンの〝ノーボディ〟と旅をする話です。
冒頭のアンリ・ミショーの詩「死者とは旅をせぬほうがよい」から監督ジャームッシュのストレンジ(奇妙)な世界に引き込まれます。汽車の中で話す機関士や道で出会う仮面のような顔の男など、登場人物が皆、奇妙で謎めいている。
最初は純朴で生真面目なブレイクが、ノーボディから同姓同名のイギリスの詩人ブレイクに間違われ、「銃で話すこと」を教わりガンマンになっていく。この変化がおもしろい。保安官に「俺の詩を知っているか?」といって銃を撃つ場面は印象的。守るものが何もなくなった時の人間の強さを感じました。荒涼とした風景を旅した後、ネイティブの舟で大海原へ旅立っていく。死は終わりではなく新しい世界に続いている気がしました。
画面はモノクローム。カメラの動きが独特で場面ごとにじっくり味わえる。謎は謎のまま、だけど見ることで何かが伝わる。この世界観は彫刻的です。見るたびに新たな発見があるんです。
この絵はニール・ヤングのギターの即興演奏に倣って、映画を見ながら偶然に思いついたイメージを画面に重ねました。主人公とノーボディの間の闇に、鳥や馬、ギターなどが現れて消えていくさまを表しました。
聞き手・石井久美子
監督・脚本=ジム・ジャームッシュ
音楽=ニール・ヤング
製作=米 出演=ジョニー・デップ、ゲーリー・ファーマーほか みさわ・あつひこ
1961年生まれ。11月29日まで、静岡県のヴァンジ彫刻庭園美術館で開催中の「生きとし生けるもの」展に出品。 |