秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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映画は僕にとって、たくさんの人生を見せてくれる大切な「食べもの」です。
これは、フランスのとある町が舞台。国語教師を引退した初老のマネスキエと、銀行強盗をするためにやって来た流れ者ミランの数日間の交流を描いた話です。僕は、マネスキエに自分と共通するものを感じて好きなんです。
心臓を患う彼は、古い屋敷に1人で住み、変化のない毎日を送っている。小心者の自分が嫌で、寡黙で雰囲気のある男とかワイルドでマッチョな男に憧れているんだよね。だからミランの革ジャンをこっそり着て、鏡の前で西部劇のまねごとをしたり、拳銃を撃たせてくれと頼んだり。男の願望を、ユーモアを交えてうまく表しているよ。そんな姿に僕の子ども時代が重なるの。子どもの頃はずっと戦争で、社会には日に焼けて屈強な男がいいという風潮があった。そんな中、僕は体が弱かったから、船乗りなんかに強く憧れていたんだよね。
2人は話すうちに相手の人生に心ひかれ、新しい人生を夢想する。「自分に自信を持て。年を経るほど輝きは増すものだ」と、ミランがマネスキエに言うセリフは印象的。それぞれの理由で死を予感する2人は、共に過ごす新鮮な現在を大切に感じていく。何だか切ないんだよ。
僕もいつ人生の終わりを迎えても不思議じゃない。だからビビッドな毎日を過ごすのが理想だよ。今を生きているってことを意識するのが大事。そう思って仕事を続けています。
聞き手・牧野祥
監督=パトリス・ルコント
製作=仏
出演=ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディほか ゆのき・さみろう
1922年生まれ。「宮沢賢治の絵本 雨ニモマケズ」が10月発売。10月14~16日、東京都渋谷区のギャラリーTOMで同絵本の原画展。 |