秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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ある日突然、異星人に操られた3本足の巨大ロボットが地中から現れる。人類は反撃の方法もなく逃げ惑うしかない。
その様子が、9・11テロの光景に重なったと言う人は多いですね。しかし僕には、中東で米軍の爆撃にさらされる民衆の姿にも見えました。そういう意味では米国に対する「告発」なのかな。いわばこれは負の歴史を暗喩する、米国が初めて作れた「ゴジラ映画」だと思います。
主人公のレイはいつもの颯爽としたトム・クルーズではなく、女房子どもに逃げられたしがない中年男。子どもたちを離婚した妻のもとに届けようと、なすすべもないまま、ひたすらロボットから逃れます。運良く生き延びただけのレイの目線で、戦争になったら困るのは俺たちなんだぞ、って言っていますよね。
スピルバーグ監督はこれまでも世界で起こる問題をストレートに表現することはあったけど、この映画では重いテーマを内在させながらエンターテインメントに落とし込んだところがうまいなあ。
一見単純なパニック映画に見えるけど、随所にあるさりげない演出に感心しますね。カメラが宙を舞うように車の外と中を行き来し、レイ、息子、娘の表情を切れ目なく映すシーンはどう撮影したのか分からない。終盤の決定的場面でも説明的なセリフは使わずかえって印象が強まった。過剰な効果を使わずとも作品を保たせる演出力を持ってる。スピルバーグのそういうところが、僕には性に合っているのかな。
聞き手・井上優子
監督=スティーブン・スピルバーグ
製作=米
出演=トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンスほか 代表作に「機動警察パトレイバー」など。月刊!スピリッツで「でぃす×こみ」、週刊ビッグコミックスピリッツで「白暮のクロニクル」を連載中。
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