秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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テリー・ギリアム監督の毒気をはらんだ趣味が全開したような作品です。私の好きなファンタジックなホラーの要素もあります。
そして、主人公のローズ役の女の子が本当に魅力的。圧倒的な存在感です。ローズは空想好きで、人形遊びをいつもしていますが、両親よりも大人びた部分もある少女。青年との淡い恋も経験します。色々な面をちゃんと演じ分けているんです。イラストには、一番印象に残った場面をイメージして描きました。人形の首を指にはめて、声色を使い分けて一人遊びしています。私もそうでしたが、子供って、軽々と空想世界に入れてしまいますよね。
ローズは、両親を薬物の過剰摂取で亡くします。母親が亡くなったとき、父親と2人で母親の遺体を飾り立てました。次に父親が亡くなると、ローズは一人きり。でも、空想好きな生活は変わりません。父親には話しかけたり、カツラをかぶせたり、お化粧もしたりして、生きているかのように接するんです。浮世離れした隣人と知り合いになると、はく製にした父親を囲んで食事をします。こういう気持ちは、昨年父を亡くしてから分かるようになりました。身近な人の死は怖いものではないんですね。
ラストで、ローズは事件に遭遇し、現実の世界に初めて直面します。映画には描かれていませんが、ここから彼女の人生の苦悩が始まるのではないかと思いました。
聞き手・土田ゆかり
監督・共同脚本=テリー・ギリアム
製作=イギリス・カナダ
出演=ジョデル・フェルランド、ジェフ・ブリッジスほか たかだ・みなえ
宝塚大専任講師。近年は人形作品も手がける。9月3日~11日、東京・六本木のストライプハウスギャラリーでグループ展を開催。 |