秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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この映画を初めて見たのは、画家としてヨーロッパでシュールアートの修業を積んで、東京に戻ってからですね。
舞台は、雨の降る近未来都市。「レプリカント」と呼ばれる人造人間が、自分たちの寿命をコントロールする人間に対し反乱を起こすんです。その反乱者を処刑する役割を担うのが「ブレードランナー」。彼らの闘いの物語ですが、実はとてもヒューマンな映画なんですね。
人間に利用されるレプリカントの命をテーマにしながら、ヒューマニズムや愛がなかったら、命に何の意味があるのか、ということを問うている。レプリカント役で僕の大好きな俳優ルトガー・ハウアーが、命の儚(はかな)さについて美しいせりふを口にします。「思い出もやがて全て消える。雨の中の涙のように」。これは彼のアドリブらしく、詩人だなあって。
イラストにはレプリカント製造会社の秘書として働くレイチェルを描きました。大きな肩パッドの入った衣装で登場するんですが、あれはファッション界に影響を与えたんじゃないかな。
映画のストーリーを楽しみつつ、リドリー・スコット監督の映像の作り方も見てほしいですね。CG技術が普及していない中で、これほどの近未来都市を描いている。さらに監督は、劇場版以降も何度も手を加えながら、2007年のファイナルカット版まで余分なものを省いていくんですね。そぎ落とすことで一番美しいものを作り上げる。俳句的なセンスを感じるんですよ。
聞き手・渡辺香
監督=リドリー・スコット
製作=米
出演=ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤングほか よしだ・るい
BS―TBS「吉田類の酒場放浪記」やNHKラジオ「ラジオ深夜便」(第2(日)午後11時台)などに出演。月刊誌「中央公論」ではエッセイ連載中。 |