トムヤムクン、グリーンカレー、アヒージョ……。「世界のグルメ」をテーマにした味付けや、「カワイイ」がコンセプトのおしゃれなパッケージが特長のサバ缶「八戸サバ缶バー(HACHINOHE 38CANBAR)」が、サバの水揚げが全国有数の八戸港をもつ青森県八戸市内で注目されている。八戸では近年なぜか、サバの成魚が小型化している。増えた小型サバの活用と地域活性化を結びつけた市内の水産加工会社「マルヌシ」の担当役員(36)に商品開発の思いを聞いた。
(渋谷唯子)
――缶パッケージのデザインが斬新です。デザインを意識するきっかけに何かあったのでしょうか。
今の仕事に就く前は、地方新聞社に勤務し、紙面の見出しやレイアウトを考える整理部という部署に配属された経験がありました。水産加工会社に就職後、商品開発を担当することになりましたが、そこで気づいたのは、これまで中身を作ることばかりに力を入れ、パッケージづくりは外部の会社に任せ、商品のコンセプトや特長をデザインに落とし込めていなかったことです。デザインの重要性を確信したのは、2015年の「おいしい東北パッケージデザイン展」です。弊社にもともとあった商品「いか三升漬」のパッケージデザインを新しくして出品したら、消費者の反応がまったく異なり、埋もれていた商品が注目されるようになりました。中身を作るだけでは「商品製造」。中身の魅力をお客様に伝えるところまでが「商品開発」です。その意味で、地方のメーカーが魅力を伝え切れていない商品はまだ多いと思います。
――パッケージデザインは、どなたが担当されたのでしょうか。
八戸市在住のデザイナーの斎藤亨さんにお願いしました。これまでのデザインの決め方とは異なり、一貫したコンセプトを持って一つの商品を作ることができました。女性からは「カワイイ」、男性からは「アイデアがおもしろい」「よく実現しましたね」という声が多いです。中身だけでなく、魅力を伝えるところまで手を抜かずに作った商品は、愛着を持ってもらえるんだと実感しました。SNSにアレンジレシピを投稿してくださる方もいて、商品を自由に楽しんでいただけてうれしいです。
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