スケートボードとサーフィンを愛する若者たちが、千葉県産の落花生を加工したピーナツバター「ハッピーナッツデイ」が注目されている。添加物を使わず、素材の味をいかした濃厚なピーナツバターは、オンラインストアのほか全国で取り扱いは138店舗(2018年2月現在)にまで広がった。落花生農家を思い、地域の未来を考える「HAPPY NUTS DAY」(同県九十九里町)社長の中野剛(ごう)さん(33)に話を聞いた。
(町田あさ美)
――ピーナツバターとの出会いは。
仲間とスケートボードで遊んでいた時、農家のおじさんから、形が悪く売り物にならない落花生を頂いたんです。僕ら普段は料理をしないのですが、その時はガスコンロとフライパンとすり鉢を借りてきて、ピーナツバターを作ったんです。おからのようなものしか出来なかったのですが、おいしかったですね。それから、スケートボードで遊んだ後はピーナツバターを作るようになって、どんどんはまっていったんです。
――その当時、中野さんは広告会社でアートディレクターをされていたとのことですが、ブランドの立ち上げにいたるまで、どのような思いがあったのでしょうか。
学生の頃から僕は、国境を越えて「日本の魅力」を伝えることに何か貢献したいと考えていました。広告会社に入ったのはその第1段階で、お茶の間にメッセージを伝える方法を学びたいと思ったから。でも、複数の企業宣伝に関わっていく中で、経営者がどんな悩みを抱え、どんな壁を目の前にして闘っているのか、もっと理解できるディレクターになりたいと思うようになったんです。それで、自分自身が経営者になれば、すごく勉強になるんだろうなと思って。まずは自分でブランドを成功させる挑戦をすることにしたんです。
――商品を手にする人の反応はどうですか。
みんな「おいしい」と言ってくれます。落花生をピーナツバターにして、ラベルやオリジナルボックスのデザイン、関連グッズなどによる発信力で補っていくことで、今まで千葉県産の落花生にあまりなじみが無かった若い子たちも手に取り始めてくれている。千葉県産の落花生って本当においしいんですよ。商品を売ることで産業を盛り上げて、農家さんたちにもっと落花生を誇りに思っていただけるようにしたいですね。
――障がい者雇用にも取り組んでいるとのことですが、何かきっかけがあったのですか。
会社設立2年後の2015年ごろから、発送作業が追いつかなくなってしまいました。でも、発送代行を頼むことで、愛をもって落花生を育ててくれた農家さんや焙煎(ばいせん)士さんたちの手を経て出来た商品が、事務的にお客さんの元へ送り出されていくことがイヤでした。そんな時に知り合いから勧められて、施設にお願いに行ったんです。実店舗がない僕らは、直接お客さんにお礼を言う機会がないので、当時から自社のオンラインストアの商品には、包み紙に「Thanks」ってペンで書いて発送していました。だけどその施設には、字を書ける人が誰もいないとスタッフの方に言われてしまって。でも2~3週間後、電話があって行ってみると、テーブル一面に「ありがとうございました」と書かれた紙が何枚も広げられていたんです。びっくりしました。みんな書けるようになっていたんですよ、練習して。それで「一緒にやりましょう、最高です!」ってお願いをすることになったんです。
――今後、中野さんはどんなことに挑戦していきたいですか。
モノは良いのに、魅力が伝えられていない。外国産との差別化ができずに衰退の道をたどっている。地方ではそういうことがたくさん起きています。そんな現状を変えるアクションを僕らの世代が今起こさないと。火が消えてしまった後では遅いと思うんです。ハッピーナッツデイは「落花生」という一つのカテゴリーの取り組みです。だから今後は、別の産業、分野にも目を向けて挑戦していきたいですね。良いものは良いと、価値の高さを伝える手助けができればと思っています。
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《スクール・オブ・ピーナッツ》 ハッピーナッツデイでは、ホームページから参加者を集い、自社が所有する九十九里町の畑で農業体験のイベント(有料)を開催している。種まきや収穫など、実際に土を踏みしめて体験することで、ピーナツバターができるまでの工程や、競合他社よりもやや高めの価格設定をしている商品へのこだわりを知ることができる。 2017年の2回の参加者は、子どもからお年寄りまで約160人。イベント終了後には、参加者が植えた落花生の成長や、収穫後の豆の乾燥、焙煎の様子などがメールで配信される。そして出来上がったピーナツバターは、参加者の自宅に届き、味わうことができる。 |
◆HAPPY NUTS DAY(ハッピーナッツデイ)
◆主な取扱店
・ハッピーナッツデイ オンラインストア
http://happynutsday.com/product
・フードアンドカンパニー
郵便番号152-0004
東京都目黒区鷹番3-14-15
TEL(03・6303・4216)
・ディーン&デルーカ
(東京、名古屋、大阪、福岡など約16店舗で取り扱い。
カフェは取扱いなし)
同店 オンラインストア
http://store.deandeluca.co.jp