新訂万国全図 東半球・西半球(写)
日本が中央に。江戸の最先端世界地図。
知的障害のある子どもたちの一人ひとりの特性を見つめ、能力を養う八幡学園。その教育指導の一環に、図工の科目があった。早稲田大学心理学教室の戸川行男教授は、園児の才能あふれる作品に着目し、1938年に同大大隈講堂で作品展を開催。画壇の重鎮だった安井曽太郎らの称賛を浴びた。
本作は、重度の障害を持つ沼祐一(1925~43)、15歳の時の作品。入園時は、話すことができず、性質も粗野だったことから、誰もが絵を描けることなど想像しなかったという。だが、沼が描き出す原始美術の風格漂う独創的なキャラクターや鮮やかな色使いは、多くの人々の心を引き付けた。
「ある意味では清君以上のその何倍かも不可思議であり、奇跡的である」と、戸川は述べている。