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美博ノート

「ガネーシャ」

アンコール・ワットへのみち(名古屋市博物館)

 


美博ノート
砂岩

 

 南国の優美な神々が並ぶ展示室で、ひときわ異彩を放つ。財産と学問の神、ガネーシャだ。

 象頭人身。右手に折れた牙の一部、左手には宝箱を持つ。象の姿になったのには、悲しい逸話が残る。父親であるシヴァ神に誤って頭を切り取られ、代わりの頭をあてがわれたのだ。

 インドからの影響で東南アジアでも信仰されてきた。「身近な動物だった象は、民衆に受け入れられやすかったのでは」と学芸員の藤井康隆(やすたか)さん。アンコール王朝(9~15世紀)前は立像、王朝時代は座像のものが多いという。10世紀後半に作られた本作は高さ70センチ。色は少し赤みがかり、鼻先と耳のひだは流れるように弧を描く。

 展示には馬の頭を持つ神も。動物の姿をした神々はどこかおおらかな表情で、心が和む。

(2016年5月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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