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美博ノート

「書籍の題字」

桃紅のしごと 題字(岐阜現代美術館)

 


美博ノート
書籍群

 

 文字の決まり事を嫌い、水墨が生み出す「線」の美しさのみで勝負をしようと、書家から抽象画家へと歩んでいった篠田桃紅。しかし一方で、文字の仕事は多く舞い込んでいた。小説や詩、新聞コラムの題字のほか、商品のロゴ、映画のタイトルなど、媒体も幅広い。本の場合は、必ず作家の原稿を読んでから取りかかったという。文字の提供は自らの表現の場ではなく、あくまでも「仕事」として割り切ったものだった。

 抽象画家として現在も活動を続ける桃紅だが、抽象画には書家・桃紅が表れていると学芸員の宮崎香里さんは言う。「桃紅の線は、どこまでも書家の線。四角い形ですら、塗るのではなく、線を引くように描くのです」

(2016年3月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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