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美博ノート

「旭焼釉下彩陶板
(あさひやきゆうかさいとうばん)」

タイル 近代都市の表面(愛知県陶磁美術館)

 


美博ノート
【右】竹に雪雀文(すずめもん)【左】薄(すすき)に月図

 

 本作は明治時代に作られた、暖炉の両脇に施す装飾用タイルの見本品だ。

 手がけたのは、日本における近代窯業(ようぎょう)の父とも言われるドイツ人のゴットフリード・ワグネル。1868(慶応4)年に来日して、博覧会での出品指導などをするほか、自らもタイル製作に関わった。うわぐすりを施した面にひびが入らず角が正確な「旭焼」のタイルは、輸出することを視野に入れてヨーロッパの規格に合わせている。

 西洋を真似ることではなく、日本文化の発信が輸出の強みになると考えたワグネルは、タイルに美しい日本画の絵付けをした。米国を中心に輸出され、好評だったという。

 92(明治25)年にワグネルは亡くなったが、教え子たちは日本の窯業界の指導者として活躍した。

(2015年12月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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