新訂万国全図 東半球・西半球(写)
日本が中央に。江戸の最先端世界地図。
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寛政6年(1794) 大判錦絵 フィラデルフィア美術館 Philadelphia Museum of Art: The Samuel S. White 3rd and Vera White Collection,1956 |
錦絵が世間に広まったころ、個性的な絵師が現れた。東洲斎写楽は、それまで役者絵の題材は主役級ばかりだったのを脇役も含めて描いた。背景はキラキラと光る雲母(きら)の粉に墨を混ぜ、一色で刷る地潰しの一種「雲母刷り」の技法を使った。
本作は1794年に上演された演目「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」に登場する、三代目大谷鬼次が演じる江戸兵衛だ。由留木家の家臣から大金を奪おうとする、まさに緊迫の瞬間。開いた両手は震えるかのようにも見える。画面から飛び出すほどの迫力がある一枚だ。役者の全身や舞台全体を描くのが大半であった当時、写楽は胸像として描いた大首絵で人気を博した。
しかし写楽は約10カ月で姿を消した謎の絵師でもある。真に迫って欠点まで描き、役者から嫌われてしまったためという説もある。