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美博ノート

「花瓶」

鯉江良二展 土に還る それ以前・それ以後
(愛知県陶磁美術館)

 


美博ノート
1960年代初期、常滑市蔵

 

 愛知県常滑市に生まれた陶芸家の鯉江良二(1938~)。陶のオブジェで注目を集める。今展は「自分史」と位置づけ、自身が創作の原点と語る器を中心に集めた。主に1960年代初頭~80年代のつぼや花器などと共に、鯉江が影響を受けたという前衛陶芸家の故八木一夫らの作品も並ぶ。

 本作は、鯉江が陶芸の道を歩み始めた初期の頃の作品だ。当時、見聞きして知り得た技法を試すように、ろくろと向き合っていた。柔らかな曲線、しっかりと形作られた口もとには、鯉江の個性がにじむ。土の配合に熱心に取り組み、本作ではマンガンを混ぜて土に表情を作っている。花瓶の下部には四角いスタンプを押し、そのくぼみに白い土を埋め込んだ。当時流行していた手法だったという。

(2015年7月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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