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美博ノート

ヴィック・ムニーズ
「『裏面』シリーズ、星月夜」

だまし絵Ⅱ展(名古屋市美術館)

 


美博ノート
2008年 作家蔵 © Vik Muniz, cour-tesy Sikkema, Jenkins & Co.

 

 一見すると壁に立てかけられ、展示を待つ額絵の裏面のよう。しかし表に絵はない。

 制作したのはブラジル出身の作家ヴィック・ムニーズ。ゴッホの名作「星月夜」の裏面を高精細なカメラで撮影し、それを元に制作したパーツを組んでレプリカを完成させた。

 なぜ裏面なのか。「星月夜」はニューヨーク近代美術館に行けば鑑賞できる。しかしその裏を見ることができるのは限られた美術関係者だけ。古びたシールは他の美術館への貸し出し履歴を示し、作品が本物であることを保証している。

 我々が価値を信じて疑わないものは、真の価値の一部でしかない。驚きの後にムニーズが残したのは、そんなメッセージかもしれない。

(2015年3月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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