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建モノがたり

共創自治区CONCON(京都市)

長屋にコンテナ 「面白い」生む基地

コンテナ(左)と長屋が並ぶ「共創自治区CONCON」。長屋の一部は入居者が共同で利用できる集会所になっている

 京都・二条城の南東、バスが行き交う御池通から油小路通を南に下ると、静かな町並みが広がる。路地を進むと、鉄骨の太い列柱や屋根に囲まれた焦げ茶色の長屋が目に入ってきた。

 手前にはコンテナに小窓をつけたコーヒーショップ。奥には給湯室などが入ったコンテナが四つ並び、長屋の上にもオフィスや事務所として大小14個のコンテナが並んでいる。

 「共創自治区CONCONと呼んでいます」。入居者の一人で、誰でもコンコンとノックできるようなこの建築を牽引(けん・いん)した不動産業の川端寛之さん(47)は話す。

 1990年初めまで古民家が軒を連ねていた一帯は、街の再開発でビルやマンションに変わり、2016年にはこの長屋3棟が駐車場に挟まれる形で残っていた。

 「面白いことができないか」。オーナーが大規模開発にこだわらない意向だと耳にした川端さんは、「デザイナーやカメラマンなどが一緒に入居できる基地があればいいな」という仕事仲間の声を想起する。

 長年温めていた、コンテナを使った建築を実現させたいという思いもわき上がった。長屋にコンテナを加え、オフィスやアトリエが入る複合施設。「世界の海を渡り歩いてきた本物のコンテナから起業すれば、純度が高くロマンもある」

 大胆な構想を建築家の魚谷繁礼(しげ・のり)さん(47)らが支えた。建築基準法では、規格の面など課題がある輸送コンテナは建築の主要構造部に使えない。そこで、安全性が求められる柱や梁などに鉄骨を使用し、コンテナは主要構造部にしない形で設計した。

 景観を大切にする京都の街で、赤色のコンテナはグレーに塗装し直すなどの工夫も重ねた。

 「町家を残しながら新しい何かを加えることで都市は良くなっていく。京都はそんな街であってほしい」

 入居可能なコンテナ室は今、大半が埋まっている。入居者は月1回、長屋で「自治会」を開き、仕事や趣味の交流を深めている。川端さんは「ルールなどで固めず、自主性に基づいた共創が生まれる場所に育てていってほしい」と話す。

(中山幸穂、写真も)

 DATA

  設計:魚谷繁礼建築研究所、muura
  階数:地上2階
  用途:店舗、事務所
  完成:2019年

 《最寄り駅》:二条城前


建モノがたり

 徒歩1分の京都絞り工芸館(☎075・221・4252)は、絞り染めを専門にした美術館。生地や道具に触れながら、絞り染めについて学ぶことができる。季節ごとに入れ替わる作品の展示も。午前9時~午後5時。1千円(大人)。(日)休みほか不定休。

(2025年3月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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