ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
幻想的な作品世界に引き寄せられ
満月の中に、丸眼鏡をかけた人の横顔とウサギを「一筆書き」で表現。金沢市の生家跡に立つ泉鏡花記念館のシンボルマークはデザイナー・泉屋宏樹さんの作品だ。
泉屋さんが鏡花に出会ったのは2010年。鏡花の小説「龍潭譚」に知人が絵をつける本の装丁を手がけることになったが、鏡花について何も知らない。すぐに住まいのある大阪から館を訪れた。「第一情報を得ること、が僕の信条。ネットで検索するより、目で見て確認したかった」
できあがったのは表紙カバーにスズ箔を張り、幻想的な小説世界を体現したような豪華本。この本をきっかけに金沢でのトークイベントに呼ばれ、館が企画した絵本の装丁も依頼された。15年のリニューアルに際したマーク制作も「泉屋さん以外、考えられなかった」と、泉屋さんの最初の訪問時に出会った学芸員の穴倉玉日さんは話す。
とり年の鏡花の向かい干支であるウサギを入れて欲しいという穴倉さんのリクエストを受け、鏡花の横顔と融合させてできたこの形。今も鏡花関連の仕事が続いている泉屋さんは、「もうライフワーク。大阪で鏡花の宣伝支部みたいなのを担っているつもりです」。
◆泉鏡花記念館 金沢市下新町2の3(問い合わせは076・222・1025)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。(火)((祝)の場合は翌平日)、年末年始休み。