ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
3千メートル級を望む町 発想を広げて
富士山に次ぐ国内第2位の高峰・北岳(3193メートル)をはじめとする3千メートル級の山々が連なる南アルプス市。名取春仙ら郷土ゆかりの作家の版画や絵画など約5200点を収蔵する市立美術館のシンボルマークは、甲府市生まれのグラフィックデザイナー・遠藤享(すすむ)さんが手がけた。
遠藤さんには記憶に残る風景があった。小学生の頃、祖父母の家から程近い昇仙峡の金桜(かなざくら)神社の石段を上ると、遠くに真っ白な富士山が望めた。南アルプスの山々も見えた。地域の特徴を表現するデザインをここから着想、正三角形のスペースの中に小さな正三角形を点在させた。
シンプルな形と色を使ったのは、「特に子どもたちに、美術館へ興味を持ってほしい」と考えたから。子どもが自分なりに積み木を組み上げるような、発想力の広がりをイメージしたという。
青い三角は山、緑の四角は大地、赤い丸は太陽を意図したが、こうした説明は「あくまで私の着想」と遠藤さん。学芸員の矢野晴代さんは、「いろいろなことが想像できて自由に楽しめるデザイン」と話した。
◆南アルプス市立美術館 山梨県南アルプス市小笠原1281(問い合わせは055・282・6600)。午前9時半~午後5時(入館は30分前まで)。原則月、祝翌日、年末年始休み。10月12~15日は展示替えのため休み。