ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
平安貴族好みの「朽ち木」再発見
「源氏物語絵巻」など国宝5件をはじめ古美術、刀剣、日本画など約5千件の収蔵品がある五島美術館。1966年から勤務した元学芸員の竹内順一さんは、古い美術品を親しみやすく、モダンに見せたいと思っていた。
海外向けの図録作成を手がけていた時、ある意匠が気になり始めた。国宝「紫式部日記絵巻」に描かれた几帳に連なる朽ち木文様。腐食したり虫に食われたりした古木をかたどった有職文様だ。
「どうしてそんな文様がはやったのか」と思いながらも、面白さを感じた。平安時代、人気だった朽ち木文様を現代的にデザイン化することとし、ポスターなどに採用。さらにシンボルマークになった。
実はこの文様、吉田五十八が設計し60年に完成した館の内装にも使われていた。寝殿造りをイメージした平屋のロビーの光天井にほのかに浮かび上がる。
「生きるものはいつか滅び転生する、諸行無常を象徴する文様かもしれません。源氏物語の世界観にも共通しますね」と竹内さんは話す。「良さに気付くのに時間がかかりました」
◆五島美術館 東京都世田谷区上野毛3の9の25(問い合わせは03・3703・0661)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。原則月曜(祝日の場合は翌平日)、展示替え期間、年末年始休み。