ふじのくに茶の都ミュージアム
稜線が白く浮き上がる富士山の手前に、緑の3本線で茶畑を表現した。数本の線を組にした「吹き寄せ」の縦じまは、小堀遠州が提唱した「綺麗さび」を意識。
収集家がほれ込んだ早世の画家
群馬県桐生市の大川美術館は、同市出身でダイエー副社長を務めた大川栄二氏(1924~2008)が約40年にわたって集めた作品を中心に1989年、市街を一望する山の中腹に開館した。現在は約7300点を収蔵する。
シンボルマークはクラシックな街灯。館職員の間で「ガス灯のカット」と呼ばれる絵だ。70点ほどを収蔵しコレクションの中核である洋画家・松本竣介(1912~48)の作品を採用した。
大川氏は20代に結核療養中、雑誌の表紙絵を切り取って眺め、絵を見る目を養った。回復後は会社員として多忙な生活を送る傍ら、私財を投じて美術品収集を始めた。中でも魅了されたのが、画商に薦められた東京・神田駿河台のニコライ堂(東京復活大聖堂)の絵をきっかけに出合った松本の作品だった。
東京・渋谷に生まれ、旧制盛岡中学で学んだ松本は、町の風景を理知的な画風で描いた。愛書家でもあり、林芙美子らの著書の装丁や挿絵も手掛けた。「ガス灯の絵が挿絵かどうかは不明ですが、インクで描かれた繊細な絵からは文学の薫りがします」と学芸員の小此木美代子さんは話す。
◆大川美術館 群馬県桐生市小曽根町3の69(問い合わせは0277・46・3300)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。原則(月)休み。1千円。