水戸元祖 天狗納豆@水戸
茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。
山梨県西部を流れる富士川に沿った国道52号沿いに、同県の郷土伝統工芸品に指定される雨畑硯の工房がある。「甲斐雨端硯本舗」は、元禄3(1690)年創業。初代雨宮孫右衛門が、富士川支流の河原で黒い石を拾い、硯を作ったことがはじまり。石は鋒鋩(ほうぼう)と呼ばれる細やかな粒子が均質に含まれた粘板岩で、硯作りに適していた。
東京芸大で彫刻を学び、30歳で家業を継いだ13代目弥太郎さん(58)と、職人1人が硯を手がける。原石の大きさや形を整え、墨池と墨道を彫り、砥石(といし)で磨き、仕上げに墨液やうるしを塗布。
雨宮家は祖父、父も東京美術学校(現・東京芸大)で学び、工芸作品としての硯を確立していった。店舗に並ぶ作品は、使いやすさと洗練された造形を両立させる。弥太郎さんは「硯は墨をすりながら心を落ち着け、自分の内面に向き合うための道具で現代彫刻でもある」と話す。明治の最盛期に約60人いたという雨畑硯職人は、現在5人になった。工房見学の小学生に魅力を伝えるなどし、石の硯が受け継がれるよう努めてもいる。
(文・写真 上江洲仁美)
◆山梨県富士川町鰍沢5411(TEL0556・27・0107)。午前9時~午後6時。不定休。鰍沢口駅から車。来訪時は事前に電話を。