水戸元祖 天狗納豆@水戸
茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。
緑豊かな住宅地にある、自宅兼工房の庭先。大きなざるの中で、十二支の人形たちが風に当たる。ほうきの材料、ホウキモロコシの茎を編んで作る郷土玩具「きびがら細工」だ。鹿沼ほうきの職人だった初代が、1918年に創業。2代目がほうき作りの傍らで端材を使って作り始め、その孫の丸山早苗さん(41)が技を引き継ぐ。
11年前、妻を亡くして廃業を口にする祖父に、一緒に仕事をすると言って寄り添った。「職人気質で、ただ独り暮らしの世話を申し出ても怒るので」と苦笑いする。編み方は目で覚えた。「小さい頃に端材で遊んだのが下地になったのかな。ちぎってご飯に見立てて、おままごとも」と丸山さん。習い始めて2年で祖父は他界した。
水に浸して軟らかくした茎を、丈夫な漁網を糸に、手のひらサイズの動物の形に編みこんでいく。糸を結ばずにからげるのは、ほうき作りの技術だ。本来は捨てる端材のため、茎は太さや長さがバラバラ。「でも、十二支を作るとまんべんなく使い切れるんです」。祖父の意匠の工夫を、日々実感している。
(文・写真 中村さやか)
◆栃木県鹿沼市村井町。購入は同市麻苧町1556の1、木のふるさと伝統工芸館(TEL0289・64・6131)などで。新鹿沼駅。