読んでたのしい、当たってうれしい。

街の十八番

宮本卯之助商店@浅草

和太鼓の音、追求し続けて

本社内に展示されている商品の前に立つ宮本卯之助さん。同社は太鼓のほかに、みこし製作なども手がける
本社内に展示されている商品の前に立つ宮本卯之助さん。同社は太鼓のほかに、みこし製作なども手がける
本社内に展示されている商品の前に立つ宮本卯之助さん。同社は太鼓のほかに、みこし製作なども手がける 木の種類や太さの違う太鼓のばちが取りそろう。一番太いもので直径4センチ

 創業は文久元(1861)年。茨城・土浦で太鼓店を営んでいたとされ、当時の屋号「山城屋」の焼き印が今も残っている。浅草に店を移したのは1893年、店名にもなった4代目の頃だった。

 現在店は、2003年に襲名した7代目で会長の宮本卯之助さん(76)と社長で長男の芳彦さん(43)が切り盛りする。製造販売だけでなく、和太鼓の文化を広げるため、太鼓の資料館や邦楽教室などの運営もしている。また、近年は海外に行く機会も増えたという。

 職人は10~70代の約30人。店で取り扱う30種類ほどの和太鼓を、工程ごとに分業して作っている。和太鼓は一つ作るのに3~5年の年月を要する。一木造りの胴は、まず玉切りの状態から外側を削り、芯をくりぬく「荒胴」に。乾燥による木の収縮を避けるため3年以上寝かせる。その後、かんなをかけて機械には出せない光沢を出す。そして最後に、音の要でもある皮を張って仕上げていく。「日々音の追求です。良い太鼓は洞の中で音が通い、抜けるように遠くまで響く」と卯之助さんは笑顔で語る。

(文・写真 町田あさ美)


 ◆西浅草店 東京都台東区西浅草2の1の1(TEL03・3844・2141)。午前9時~午後6時。無休。田原町駅。

(2018年7月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

街の十八番の新着記事

  • 水戸元祖 天狗納豆@水戸 茨城といえば納豆というイメージをつくったのが水戸の「天狗(てんぐ)納豆」。

  • 大和屋@日本橋 東京・日本橋、三越前に店を構えるかつお節専門店。江戸末期、新潟出身の初代が、魚河岸のあった日本橋で商いを始めた。

  • 佐野造船所@東京・潮見 水都・江戸で物流を担ったのは木造船だった。かつて、和船をつくっていた船大工は今はほとんど姿を消した。佐野造船所は、船大工の職人技を代々受け継ぎながら生き延びてきた。

  • 天真正伝香取神道流本部道場@千葉・香取 「エイ」「ヤー!」。勇ましいかけ声と木刀の打ち合う音が響く。千葉県香取市、香取神宮のほど近く。約600年連綿と伝えられてきた古武術、天真正伝(しょうでん)香取神道流の本部道場だ。

新着コラム