似鳥美術館
北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。
西欧の宣教師たちが日本を訪れ、キリスト教を広めた16世紀。西洋画法を学ぶための画学校が建てられ、布教に用いる聖画像が、日本人の手で数多く生み出されました。そして次第に、国内で南蛮美術が流行していったのです。東洋美術を中心に、約3500点を収蔵する当館では、リニューアル記念としてその中から、この時代の8点を展示しています。
「洋人奏楽図」は、日本人によって描かれた、初期の洋風画です。陰影法や遠近法など、ルネサンス末期の西洋画法が使われています。当時の戦国大名たちは、戦闘図やこの作品のような牧歌的な題材を好み、邸宅に屛風(びょうぶ)などとして飾ったのです。
「花クルス文螺鈿(らでん)箱」も同時代のものです。キリスト教の十字、仏教の右まんじ、日本の七曜紋が取り入れられ、さらにふたに施された「花唐草」は、朝鮮王朝の意匠とよく似ています。さまざまな国の文化が交ざり合った、特徴的な作品です。西欧から文化や美術が入ってきた桃山時代は、非常に華やかで、国際色豊かな時代だったと言えますね。
ですが、16世紀後半になると、「バテレン追放令」などにより、キリスト教徒たちは弾圧されていきます。現代に残る美術品は、教徒が家の土蔵や壁の中などに、大変な思いで隠してきた貴重な品々なのです。
(聞き手・白井由依子)
《MOA美術館》 静岡県熱海市桃山町26の2(TEL0557・84・2511)。午前9時半~午後4時半(入館は30分前まで)。11月1日を除く(木)休み。1600円。2作品は特別展「信長とクアトロ・ラガッツィ」(11月4日まで)で展示。
館長 内田篤呉 うちだ・とくご 専門は日本美術史。2013年に館長に就任。著書に「塗物茶器の研究」「光琳蒔絵の研究」など。 |