ダンス(ロックンロールの七つの芸術)1957年
©Salvador Dali, Fundacio Gala-Salvador Dali,JASPAR Tokyo,2018 E3049
スペイン出身のサルバドール・ダリ(1904~89)は、夢や空想の世界を描くシュールレアリスムの代表的な芸術家です。風景画や肖像画のほか、彫刻も手がけました。
99年に開館した諸橋近代美術館は、ダリの絵画、彫刻など346点を所蔵しています。
今回紹介するのは、ダリが仏から米に拠点を移した40年以降の作品。仏ではシュールレアリスムのグループに所属していましたが、奇抜な行動などがもとで除名されてしまいます。しかし米では、百貨店のディスプレーなど様々な分野に挑戦し、大きなインパクトを与え、知名度を上げました。
57年制作の「ダンス」は、当時、ニューヨークのブロードウェーにあったシアターに飾られました。ロックンロールにのって激しく踊る、体のねじれた奇妙な男女を表現しています。目をこらすと、絵の中に「DALI」の文字が見えてきませんか。一つの形の中にもう一つのイメージを隠す「ダブルイメージ」という手法です。自己顕示欲の強い性格も透けて見えますね。
もう一点は晩年に制作したゆがんだ時計の彫刻。代表作「記憶の固執」(31年)に登場する、枝にひっかかった時計を立体化しブロンズで表現しました。ゆがんだ時計はダリのアイコンとなり、米での人気や成功に導きました。側面から作品をみると、「?」のシルエットが浮かびあがります。
(聞き手・佐藤直子)
《諸橋近代美術館》 福島県北塩原村桧原剣ケ峯1093の23(TEL0241・37・1088)。午前9時半~午後5時半(入館は30分前まで)。950円。6月25日~7月7日休み。2点は10月21日まで展示。
学芸員 大野方子
おおの・まさこ 専門は近・現代西洋美術史、特にサルバドール・ダリ。同館の展覧会企画、コレクション収集と調査に携わる。
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(2018年6月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)