現代美術を専門とする美術館の先駆けとして1979年に開館しました。美術は門外漢の実業家でしたが、海外で美術家やコレクターらと出会い、アートが社会に果たす役割や力に気づいたのが設立のきっかけです。開館当初の77点から始まり、今ではウォーホルや草間彌生ら国内外の約400作家の作品1千点以上を所蔵しています。
建物は、実業家だった祖父・原邦造の私邸でした。東京国立博物館本館や銀座・和光を手がけた渡辺仁の設計で38年築。白が基調のモダニズム建築です。
今回紹介するインスタレーション(空間芸術)は、作家自身が館内から作品を作りたい場所を選びました。奈良美智(よしとも)の「My Drawing Room」は、もとはバスルーム。壁や床に廃材を張り、自身のアトリエを再現しています。ドローイングのほか、当館での個展の前に彼がここで飲んだワインの瓶やたばこの吸い殻などもあります。On going(進行中)の作品で、不定期にオブジェの位置を変えたり、小物を増やしたりしています。現代美術ならではのだいご味ですね。
須田悦弘(よしひろ)は暗室だった小部屋を利用し、むき出しの配管と新たに設置した漆の台に、木彫のツバキの花を飾りました。こちらも時々テッセンの花に替えています。作品名「此(こ)レハ飲水(のみみず)ニ非(あら)ズ」は、左側のタイルの壁に残る古い貼り紙に由来します。
(聞き手・牧野祥)
《原美術館》 東京都品川区北品川4の7の25(TEL03・3445・0651)。午前11時~午後5時((祝)を除く(水)は8時まで。入館は30分前まで)。1100円。原則(月)((祝)(休)の場合は翌平日)休み。紹介した2作品は常設展示。
館長 原俊夫 はら・としお 1935年生まれ。6月3日まで開催のコレクション展「現代美術に魅せられて」で初めてキュレーションを担当した。 |