「中華そば紅蘭(こう・らん)」の中華そば 「ふるさとの思い出の味を食べたい。一緒に行く?」。5年ほど前にコンサートで山口県を訪れたとき、山口出身のマネジャー・山本さんがそう言って、連れて行ってくれました。
初めてお店を訪れたのは、もう十数年も前。外国語指導助手として来日したころでした。その後、大学院入学を機に京都市内に引っ越し、お店が近くで常連になりました。
僕は自炊がすごく苦手で、9割が学食、残りは外食という食生活でした。なるべく多く野菜をとりたい。このピタサンドは結構野菜が入っていてボリュームがあり、味もしっかり。夕方に学校を出て、鴨川沿いや糺の森をちょっと散歩して、ついでに食べて帰ることが多かったですね。
ファラフェルはここがダントツ一番。ひよこ豆の自然な味を生かしていて、揚げ物で一つが割と大きいのに脂っこくない。タヒニという、ゴマをペースト状にしたソースがまたおいしいんです。
アメリカから母と弟が来てくれた時、金閣寺や清水寺に加えて、ファラフェルガーデンにも連れて行きました。2人からしたら「京都で中東料理?」という気持ちがあったかも。でも、紹介したくなるくらいおいしい。長く住んでいたからこそ知っている、ローカルなお店を教えたかったのかもしれません。
現在は東京住まいです。小説「鴨川ランナー」に書いたように、長年過ごした同じ場所に立つと、過去の記憶が浮かぶ。自分の中の変化を京都に行く度に実感します。ファラフェルの味は変わりませんね。
(聞き手:伊東哉子)
◆京都市左京区田中上柳町15の2(問い合わせは075・712・1856)。
M890円、L1570円。
平日が午前11時半~午後9時(ラストオーダーは30分前)、土・日・祝が午前11時半~午後8時半。(水)休み。
作家、法政大准教授。
1984年、米国生まれ。2021年「鴨川ランナー」で京都文学賞を受賞し、デビュー。22年、「開墾地」が芥川賞候補に(共に講談社)。「群像Web」でエッセー「物語を探しに」を連載中。
▽群像Web:グレゴリー・ケズナジャットさん
https://gendai.media/list/author/gregorykhezrnejat