読んでたのしい、当たってうれしい。

滝口悠生さん
「セクワガル」の ハリヨ クルサニ カクロ 

「セクワガル」の ハリヨ クルサニ カクロ 
「セクワガル」の ハリヨ クルサニ カクロ 
「セクワガル」の ハリヨ クルサニ カクロ  滝口悠生さん

 キュウリに、切った唐辛子のソースをのせただけ。さっぱりしているし、めちゃめちゃ辛い。こんな夏場にいいんです。シンプルでストイックなメニューじゃないですか。でも、奥が深いような気もしますね。まずは、これとビールを頼んで始まります。

 ここのお店は、セクワ(肉などの串焼き)もおいしいし、カレーもおいしい。それに加えて「キュウリもある」が大事です。ちょこっとしたものが好きで、そういうところでお気に入りになります。

 以前、世界中の作家が集まる「インターナショナル・ライティング・プログラム」で米アイオワ州に滞在しました。3カ月ほどでしたが、頻繁に通う店はだんだんと限られてくるんです。愛着があったのは、他の作家さんいわく「そんなに」なお店。考えてみたら、味がどうのっていうより、総合的な感じなんですよね。よく行った中華料理店には、ご飯と温かいおかずの組み合わせがあった。日本料理屋ではなかったんです。

 外食時に「絶対、すごくおいしいものを食べたい」とはあまり思いません。お店への行きやすさも大事だし、どんな組み合わせで注文するとか、値段とか、そういう全体のあんばいが良いというのがベスト。居心地のよさや楽しかった記憶と一緒に、「おいしかった」がある感じです。

(聞き手:伊東哉子)

 ◆東京都新宿区北新宿3の1の3、クラウンビル1階(問い合わせは050・5456・1329)。
  午前11時半~午前0時。
  500円。
  名物は、卓上の自動串焼き機でクルクル回るセクワ(盛り合わせで1050円)。


 たきぐち・ゆうしょう 小説家。
 2016年に、「死んでいない者」(文芸春秋)で芥川賞、22年に「水平線」(新潮社)で織田作之助賞、23年に「反対方向行き」(交通新聞社刊「鉄道小説」収録)で川端康成文学賞を受賞。最新刊は「ラーメンカレー」(文芸春秋)。

(2023年8月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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