「梅林堂」 彩のさくさく お笑いコンビ「ロッチ」のコカドケンタロウさん。埼玉方面に出かけると、あるお店を探してキョロキョロ。何を探しているの?
東京の新代田駅近くに暮らしていたことがあって、8年ほど前にふらっと立ち寄りました。それから、自分へのご褒美として通っています。
島ずしはもともと八丈島の郷土料理だと聞きました。玄鮨(げん・ずし)の「島鮨」は、赤酢を使用したシャリに、漬けにしたネタが乗っています。脂がのった魚の塩気とタレの甘み、赤酢、ネタに添えられた辛子のすべての相性が良く、衝撃的なおいしさです。
寡黙だけれど、お客さんをよく見てくれる大将にもひかれます。私は静かに味わうのが好きなので、とても居心地が良い。すしを握る手さばきも眺めていたいのでカウンター席だとうれしいんですが、たとえテーブル席でも大将の姿に見入ってしまいます。
食への意欲は年々増している気がします。小説や映画に料理が登場するとすぐに影響を受けます。でも言われてみれば、私が書く小説に料理が登場することは少ないかもしれません。食材の匂いや舌でなぞる感触が伝わってくるような表現が好きで、もし食をテーマに書くとすれば、食べ物をかんだ食感を1ページにわたって書くかもしれないです。
玄鮨は、自分に“満足”を教えてくれた存在です。「おなかいっぱい」という物理的なものではなく、心身共に。心まで満ちていく食べ物との出会いは、巡り合いだと思います。
(聞き手・田中沙織)
◆東京都世田谷区代田6の29の8(問い合わせは03・5453・7789)。
1貫250円(税別)。
午後5時~11時半(ラストオーダーは11時)。
不定休(12月31日~1月5日は休み)。
詳細はインスタグラム(@uninaramaki)で。
玄鮨 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/uninaramaki/
さくら・まな AV女優・作家。1993年、千葉県出身。
2020年に刊行した「春、死なん」は、第42回野間文芸新人賞候補に選出された。
新刊は三つの短編を収めた小説集「ごっこ」(いずれも講談社)。