つめをぬるひとさん(爪作家)
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
中学生の時、4歳上の姉が興奮して映画館から帰ってきたんです。「劇場が拍手でいっぱいだった」って。1年後、近くの映画館に2本立てとしてやってきて、興味津々で1人で行きました。
ろうあ者を装っていたネイティブアメリカンの大男、チーフが窓を破り精神科病院を脱走して大地へ走り出す――。上映が終わると、やはり大拍手でしたね。途中までは苦しくて、つらくて。でも、チーフが飄々(ひょう・ひょう)とバスケットボールのゴールを決めたり、緩急が絶妙なんです。ちょうど社会科のリポートの課題がネイティブアメリカンで、自分なりに調べていたので入りやすかった面もあるかもしれません。当時のアメリカ社会を見事に描き切っていました。
小学3、4年生のころからノート2冊に映画の感想をまとめていました。1冊は劇場で見た作品、もう1冊にはテレビで見た作品の感想。劇場用に「ポセイドン・アドベンチャー」、テレビ用には「荒野の七人」とか。
初めて見てから十数年後、監督のミロスに会うんです。映画のオーディションを東京で受け、彼の前で何日も演技して。当時、自分は才能がないのかなと落ち込んでいました。でも、彼は穏やかで愛にあふれていた。帰国する時、「You are so wonderful」と記したカードとブレスレットをもらったんです。この世界で続けていくぞって思いましたね。映画の制作は進みませんでしたが、彼の言葉は宝物です。作品も、ミロスも、「自身が自由であり、心の解放があればもっと幸せになれる」と教えてくれました。
(聞き手・阿部毅 )
監督=ミロス・フォアマン
製作国=米国 出演=ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、ウィル・サンプソンほか
にながわ・みほ 1985年、TVドラマ「五度半さん」でデビュー。映画、舞台に多数出演し、ロックバンドも結成。来秋に5回目の絵画展を予定。
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