「アフター・ヤン」(2021年) 「テクノ」と呼ばれる人型ロボットのヤン、中国系の養女・ミカ、養父母が暮らす近未来が舞台です。
汗ばむような気温とか、ほこりのにおいまで伝わってきて、その場面の中にいるような錯覚を覚える。五感を刺激される映画です。没入感があって、お酒を飲んでぼーっとしている時にお薦め。
舞台は1950年代のベトナム。裕福な家庭にやってきた幼い使用人ムイが主人公です。虫を見つめたり、葉から水滴がしたたるのを眺めたり。何げない出来事を切り取り、連続してつなげて、成長していくムイの日常が描かれます。ムイは教育を受けられなかった。後半は大人になったムイの憧れ、望む幸せまでも日常の中に溶け込んでいます。セリフで語られはしないんですが。
イラストは、料理を運んで歩くムイを、カメラが建物の外側を横移動しながら追いかけるワンシーン。カメラワークが特徴的です。Twemoji(ツイモジ)の「歩く」で表現しました。ツイモジとは、X(旧ツイッター)社が公開しているオープンソースの絵文字のこと。わたしは普段、ツイモジを組み合わせたり編集したりして漫画を描いています。ムイ以外も全部ツイモジ。チョウとかヤシの木は少し色を変えたかな。黒い点はアリですね。後ろの木質の建物はイス。ホウレンソウとかも入れたので探してみてください。
わたしの漫画は、SFやスプラッター映画の影響も大きいのですが、実は、バックグラウンドにある隠し要素がこの「青いパパイヤの香り」。構図や場面の流れを参考にしています。かめばかむほど、とはちょっと違いますが、見返すたびに気付きの彩度が上がってきたような。たぶん死ぬまで見る映画ですね。
(聞き手・島貫柚子)
監督・脚本=トラン・アン・ユン
製作国=フランス、ベトナム 出演=トラン・ヌー・イエン・ケーほか 撮影=ブノワ・ドゥローム 性別年齢非公開。インスタグラムは@godvsninja。「EMOJI MANGA vol.1」をKindleで販売。「顔出し(取材)は初めて」
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ロングインタビュー
https://www.asahi-mullion.com/column/article/dmovie/5870